森と街をつなぐ建築の物語 (4)

広葉樹の森のこと

街と里のつながりについて調べるなか、大阪府森林組合の花﨑由泰さんと出会い、能勢の森で取り組まれている広葉樹の林業について知りました。
 日本は国土面積の2/3が森林で、世界有数の森林国です。大都市大阪においてもその面積のうち3割が森林なことは、あまり知られていません。なかでも能勢町は、府内で最も大きい約7,700haの森林を有しています。
 能勢の森林は、約36%がスギ・ヒノキなどの人工林で、残りの64%がアカマツ、クヌギ、コナラを主とした雑木林。かつてはほとんどがマツと広葉樹の森でした。
戦後、国策としてスギ、ヒノキが植林され、その森林から木材を生む林業が主流になりました。こうした林業が推し進められる一方、天然林に元々多くある広葉樹の利用、クヌギやコナラの人工造林も小規模であるものの行われてきたのです。
能勢でも広葉樹の多くは、古くから薪や木炭など生活に欠かせないエネルギー源として、きのこ栽培の原木や有機質肥料として、繰り返し伐採・利用されてきました。

人の手が入ることで更新を繰り返し、維持されてきた「里山林」です。
しかし高度成長期以降、薪や木炭から石油、電力、ガスへとエネルギー源が移行し、里山の役割が徐々に薄れ、林が放置されるように。伐採利用されることなく木が高齢大径化すると、光が届かなくなった下層の植生が乏しくなります。それにより野生動物が市街地に降り、農作物や人に被害を出す例が急増しているのです。
大阪府森林組合では、クヌギやコナラなどの雑木林を少しずつ伐採、萌芽更新し、搬出して利用することで、本来あるべき里山の再生を進めています。
 こうした森の取り組みを知り、建築を通じて街に届ける挑戦がはじまりました。

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